あなたくれない
米子さんは私に手を伸ばす。
その手をおばあちゃんが叩き払う。
「帰りなっ!! こっちはアンタと話すことなんか何もないって言っているだろう!!」
米子さんは残念そうな顔になり、涙目になりつつ、回れ右をした。
「♪返せよ 返せよ
夕焼けの向こう
暗がりの中を
駆けてゆけ……」
米子さんが大声で歌った。
その大音量の歌声を聴いて驚いてしまう。
米子さんは振り返り、手招きした。
「……みなでゆくぞ
お前のところ♪」
ゾッとした。
いつも聴いたり、歌ったりしている唄なのに。
何故か思った。
(怖い……)
そして、私は玄関で靴を履いた。
「穂希!?」
「ちょっと、話してくる……!」
話さなくちゃいけない。
そう思った。
米子さんは、何かを私に伝えようとしている。
それを聞かなくてはいけない気がしたから。
「待って、待って、米子さん!」
米子さんに追いついた。