あなたくれない

原西のおじさんが、
「帰りなさい。おじさんが家まで送ろうか?」
と言ってきたので、
「大丈夫です。ひとりで帰ります」
と、返事をした。



おじさんは「そうか、気をつけてな」と言って、川のほうへ歩いて行った。



来た道を。

ひとりで歩いて帰る。



(……米子さんは、何て歌ってた?)



確か、『お前はいない』とか。

『夕焼けの終わり』……。

『帰る』とか、何とか……?



(どうしてこの唄を、私に聴かせたかったんだろう?)



「穂希? ……穂希!!」
と、声がした。



夕焼けの日を浴びながら。

私に近寄ってきたのは。

駿翔くんだった。




「駿翔くん」



駿翔くんは心配そうな顔をしている。



「大丈夫か? 元気なのか?」

「あの、ごめん。メッセージの返信、送ってなくて」

「え? あ、いいよ、そんなの。会えて良かった」



駿翔くんは学校帰りらしく、制服姿だった。



「学校は……、しばらく休むの?」
と尋ねられ、
「学校は休んだほうがいいって、おばあちゃんが言うんだ。私も時々、外に出ることが怖い時もあるから」
と、私は俯いた。
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