あなたくれない
私は、駿翔くんのその笑顔を見て。
あぁ、好きだなぁって思った。
この笑顔を向けてもらえることが嬉しい。
そして、独り占めしたい。
そう思ってしまった。
「……唄?」
私達は真っ直ぐに家に帰らずに。
村の自治会館の前で話していた。
駿翔くんは自治会館のそばにある、村で唯一の自動販売機の前に立つ。
「そう、唄。それをわざわざ私に教えに来たらしくて……」
私は駿翔くんにこれまでのことを話した。
駿翔くんはだいたい噂で聞いていたらしいけれど。
やっぱり驚いて、そして心配してくれた。
「何か意味があるはず。……米子さんは何かを知っているのかも」
「駿翔くんもそう思う?」
「うん。わざわざ家に訪ねてまで伝えたかったんだろうし……」
「“くれない様”が目覚めたことと、この唄と、何か関係があるのかな?」
「多分……。そうじゃないと、今、穂希に近づく意味がわからない」