あなたくれない
そうだよね、と言い、私は唄の歌詞をもう少し真剣に聞いておけば良かった、と改めて後悔した。
「“くれない様”ってさ、詳しく知ってる?」
そう言った駿翔くんが、自動販売機で買ったジュースを「あげる」と言って、私に渡してくれる。
私が「いいの?」と聞くと、駿翔くんは頷いた。
「……詳しくは、知らない。怖い存在だって思ってはいるけれど」
と、私は話を戻す。
「ずっとこの村に伝わってるんだろう? お年寄りも子どもも、みんな“くれない様”のことは知っている」
「うん」
「でも、詳しくは知らないんだよな」
「……多分。私達よりおばあちゃんとかのほうが、何か知っている気もするけれど」
「何かって?」
私は慎重に言葉を選んで、でも、出て来た言葉は、
「……“くれない様”の怖さ?」
という、薄っぺらいものだった。
「……どうやって調べたらいいんだろう?」
「え? 駿翔くん、調べてくれる気があるの?」
「あるよ! だって、このままじゃ穂希が……っ、その、困ることになると可哀想じゃん」