あなたくれない
モゴモゴと言う駿翔くん。
「ありがとう」
心からのお礼だった。
駿翔くんは、私を責めたりしない。
私を怒鳴りもしないし、非常識な人だと軽蔑の目を向けることもしない。
変わらず、接してくれる。
そのことが。
泣きそうになるくらいに嬉しくて。
より一層、恋心が膨らんだ気がした。
「……誰か詳しく知らないかなぁ、“くれない様”について」
駿翔くんがジュースを飲み干して、ぼんやりと呟く。
「うーん、どうして“くれない様”がこの村で祀られているとか、そういう歴史がわかるといいのにね」
「そう、歴史……。……歴史? そっか! 歴史!」
駿翔くんはひとり、何かに思い当たったようだった。
「どうしたの?」
「穂希! 歴史だよ!」
「?」
「村の歴史を調べればいいんだ! “くれない様”について何かわかるかもしれないじゃん!」
「え、でも、“くれない様”について調べるんじゃなくて?」