あなたくれない
駿翔くんは「ちょっと見せて」と、その本をパラパラめくる。
「内日暮村の地図とか、絵とか写真がいっぱい載ってるんだな」
「うん。わかりやすかったよ」
「他の二冊も見てみよう」
と、駿翔くんが手に取る。
「この『内日暮村事件録』の筆者の名前、見て」
と言われ、私は表紙を見てみる。
【黛 圭一】と書いてある。
「穂希は知ってる? 黛 圭一さんって」
「ううん。知らない。……村の人じゃないかも? 黛さんなんて人、村にはいないと思うし」
「そっか」
駿翔くんがもう一冊も手に取る。
「これも『内日暮村事件録』って書いてある。下巻だって」
「本当だ」
私達は黛 圭一の書いた二冊の本を持って、読書室へ移った。
二冊とも、村で起こった事件について書いていた。
その内容は、窃盗事件や詐欺事件から、殺人事件まで書かれていて。
犯人がわかっているものもあれば、わかっていない未解決のものもあった。