あなたくれない
それに、内日暮村を調べるなら。
“くれない様”は欠かせない存在であるはず。
象徴と言っても過言ではない。
(そんな存在を無視出来るはずがない)
「隠したのかもしれない」
と、私は呟いた。
「隠す?」
「うん。黛 圭一に知られないようにした、とか。私達の村の先祖が、隠したんだよ。黛 圭一が本で発表しないように」
「何のために?」
「わからない。だけど村には、本で発表されると困る人がいたのかも」
駿翔くんは黙って頷いた。
その時。
ヴーヴーヴー……。
私のスマートフォンに着信があった。
読書室から出て、電話で話していても大丈夫な休憩室に行く。
「もしもし、おばあちゃん?」
『今、どこにいる!?』
電話越しにおばあちゃんの大声が耳に響く。
「えっ、今、図書館にいるよ」
『すぐに!! 帰って来なさいっ!!』
「何? 何があったの?」