あなたくれない
おばあちゃんの呼吸が荒い。
走った後みたいに。
『現象が起きているんだ!!』
「現象? 現象って?」
『とにかく!! 早く帰って来なさい!!』
ブツッと電話が切れた。
スマートフォンを耳から離す。
嫌な予感が背後から迫ってきている感覚がした。
読書室へ帰り、駿翔くんにおばあちゃんからの電話の内容を告げると、
「帰ろう」
と、駿翔くんが立ち上がった。
「現象が起きてるって、おばあちゃんが言ってた」
「現象? ……とにかく早く帰ろう。家まで送るから」
図書館を出てすぐにやって来たバスに乗り、村を目指す。
バスの中。
駿翔くんが、
「黛 圭一って人、なんで内日暮村の歴史について書いてたんだと思う?」
と、尋ねてきた。
「わからない。興味があったとか?」
「興味……、興味か」
「何?」
駿翔くんが何を言いたいのか、私にはわからない。
「“くれない様”のことを知らないとして、オレらの村のどこに興味を持ったんだろうな?」