あなたくれない
「確かに……。“くれない様”くらいしか目立つところなんてないもんね?」
「何もないじゃん。黛 圭一の本に、内日暮村が自然豊かだとか、空気が澄んでいてキレイとか、そういうことが書いてあれば、村の自然とかの角度から興味を持ってもらえたとは思えるんだけど」
私は慎重に頷いた。
黛 圭一の本の内容を思い出したからだった。
(内日暮村の事件の歴史……)
「穂希が電話している間に、あの本の筆者情報を探してみたんだ。本の最後に、ほんの少し載っていたんだけど」
「どんな人だった?」
「黛 圭一の出身地は載っていなかった。1901年に生まれているってことと、二十四歳で結婚して、その翌年に息子がひとり生まれていることが載っていた」
「……1901年……」
私はスマートフォンを取り出し、検索をした。
「1901年って、明治三十四年って書いてある。2024年から1901年を引いたら……」