あなたくれない
「123になる。黛 圭一がもし生きていたら、123歳のおじいさんなんだな」
計算が速い駿翔くんがそう言って、
「……何歳の時に書いた本なのか、調べるの忘れたぁ」
と、残念そうに呟いた。
それから思い出すように、教えてくれた。
「本の1ページ目にさ、書いてあったんだよ。【最愛の孫娘に捧げる。人生の力になりますように】って」
「孫娘? じゃあ、孫が生まれた頃に出した本ってこと?」
「そうだと思う。でもさ、そう考えるとおかしくない?」
駿翔くんが何を言いたいのか、今度はよくわかった。
村の事件をまとめて……、しかも殺人事件まで載っているのに、その本を孫娘に捧げる?
人生の力になりますように、という願いも、どういうことなのか理解出来ない。
「黛 圭一がそもそもなんで村の事件に興味を持ったのかも、オレは気になる」
「うん。村の文化とかじゃなくて、事件ってところが、私も引っかかる」