あなたくれない

「現象……」

「見なかったかい? 真っ赤な月と、その周りに赤い輪が浮かんでいただろう?」

「見たけど。現象って、“くれない様”とどういう関係があるの?」



私が問うと、おばあちゃんは私のベッドに腰かけた。



「“くれない様”を目覚めさせた人間はね、穂希、あんたが初めてじゃないんだよ」

「!!」

「ずっと生きているとね、色んなことを見たり聞いたりするけれど、今回のようなことも過去に起きているんだ」



おばあちゃんはため息混じりに続けた。



「“くれない様”が目覚めた時、あの現象が起きる。なぜかはわからないけれど、村の土地からしか見えないんだ。現象が起きている同じ時刻に同じ空を見上げても、それが村の外なら通常の空なんだ」

「そうなんだ」



確かに。

隣町の図書館では空の違和感に気づかなかった。



「そして、“くれない様”が行動を起こす時も現象が起きる。だけど目覚めている期間でも、現象が起きていない時だってあるんだ」

「……そうなの?」
< 77 / 255 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop