あなたくれない
「現象……」
「見なかったかい? 真っ赤な月と、その周りに赤い輪が浮かんでいただろう?」
「見たけど。現象って、“くれない様”とどういう関係があるの?」
私が問うと、おばあちゃんは私のベッドに腰かけた。
「“くれない様”を目覚めさせた人間はね、穂希、あんたが初めてじゃないんだよ」
「!!」
「ずっと生きているとね、色んなことを見たり聞いたりするけれど、今回のようなことも過去に起きているんだ」
おばあちゃんはため息混じりに続けた。
「“くれない様”が目覚めた時、あの現象が起きる。なぜかはわからないけれど、村の土地からしか見えないんだ。現象が起きている同じ時刻に同じ空を見上げても、それが村の外なら通常の空なんだ」
「そうなんだ」
確かに。
隣町の図書館では空の違和感に気づかなかった。
「そして、“くれない様”が行動を起こす時も現象が起きる。だけど目覚めている期間でも、現象が起きていない時だってあるんだ」
「……そうなの?」