あなたくれない

「そうさ。“くれない様”が動かない限り、現象は起きない」

「!」

「穂希、灯籠が倒れていた日を覚えているかい?」



私は頷く。



「あの日の空はいつもと同じだった。現象が起きていなかったんだ」

「不可解なことばかり起きてたけど、米子さんの言うように、死霊の仕業なの?」

「米子の言うことを間に受けたくはないけれど、きっとそうなんだろうと思う」
と、おばあちゃんは言って、ため息を吐いた。



そして、静かな声で言った。



「もしも、“くれない様”の仕業なら……、穂希は今、ここにいないかもしれない」

「!!」



心臓が騒ぎだす。

ドギマギして、苦しい。



「いいかい、穂希。あんたには呪いがかけられている。“くれない様”は(のが)してはくれないんだ」

「おばあちゃん」

「怖いことの連続が待っている」

「……っ」

「想像を絶する恐怖が待っている。“くれない様”を目覚めさせた代償は大きいんだ」



おばあちゃんは俯いた。

そんなおばあちゃんに、私は聞かずにはいられなかった。
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