あなたくれない
「私…って、死ぬのかな?」
おばあちゃんは俯いたまま、答えてくれなかった。
笹川のおばあちゃんは。
川の近所に住んではいるものの。
おばあちゃんの言う通り、水嫌いで有名だった人らしい。
普段から川には極力近づかない。
村の人達は。
笹川のおばあちゃんが殺されたと。
確信しているみたいだった。
そして。
その犯人は“くれない様”だと思っている。
「笹川さんの事件を公にはしないことが決定されたよ」
と、数日経った夕方、おばあちゃんが言った。
リビングで。
私とお母さんに向かって。
抑揚のない声で言ったおばあちゃんは。
疲れたようにソファーにどかっと座る。
「もう旦那さんも亡くなっているし、あの夫婦に子どもはいないから、内密にしやすいんだろう」
「そんな……」
「無念だね。あの人は気持ちの優しい、やわらかい心の持ち主だった」