あなたくれない
お母さんが淹れたお茶を受け取りつつ、おばあちゃんはため息を吐く。
「おばあちゃん」
「何だい」
「“くれない様”は前にも目覚めたことがあるって言ってたよね?」
おばあちゃんは眉間にシワを寄せて、頷く。
「私がこの家に嫁いだ頃だよ。奈緒子もまだ生まれていないね」
お母さんを見つつ、おばあちゃんはお茶をひと口すする。
「当時の小学生の男の子ふたりが、遊び半分で“くれない様”を目覚めさせた。私はあの時に初めて、現象を見たんだ」
「その時も今回みたいに事件が起きたの?」
私の質問におばあちゃんは私の目をまっすぐ見て、
「いや、事件が起きる前に、終わったんだよ」
と、言った。
「どういうこと? ……その、目覚めさせた小学生達は? 助かったの?」
「亡くなった。可哀想な最期だったそうだよ」
おばあちゃんは全てには答えず、俯いた。
お母さんが目を見開き、
「そんな……! 何とかなるでしょう?」
と、おばあちゃんを責めるように言う。