あなたくれない

バス停で、バスを待っていたら。



「穂希!」
と、駿翔くんがやって来た。



「えっ? 駿翔くん、授業は!?」

「それ、こっちのセリフだから。……何? 帰んの?」



鞄を持った駿翔くんは当然のように、私の隣に座る。



「サボる?」
と、私の顔を覗き込む駿翔くん。



私は黙って頷く。

声を発したら、泣いてしまいそうだったから。



「オレもサボろうかな。……共犯だな」



駿翔くんはそう言って、しばらく黙った。



それから、
「穂希」
私の頭を撫でて、
「ごめんな」
と、謝った。



私は首を振った。



「穂希は琳音と話せた?」



再び首を振ると、駿翔くんはため息を吐いた。




「あいつさ、怒ると人の話を聞かないもんな」

「うん」
と、返事をするともう、堪えていた涙が目の端からこぼれた。



「泣くなよ」
と、駿翔くんは指先で私の涙を拭った。



「さっき琳音に誤解だって散々言ったんだけど、穂希を庇ってるって聞く耳持たないんだ、あいつ」

「うん。でも放課後にね、琳音から会おうって手紙もらったよ」

「え?」
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