あなたくれない

村井のおじさんは、
「きゅ、救急車!!」
と、スマートフォンを操作している。



おばあちゃんが女の子に近寄り、
「あんた、名前は何だい?」
と、背中をさすった。



(のぞみ)……」

「希ちゃんね。あんたは?」
と、おばあちゃんは私達をつれて来た男の子を見る。



(けい)です……。おと、弟は? どうなるの? 死んじゃうの?」

「村井のおじさんが救急車を呼んでいるから、少し落ち着きなさい。恵くん、希ちゃん、何があったか、私に説明出来るかい?」



恵くんは一度頷き、
「光は熱を出していたから三階の寝室で寝ていて……、オレ達は隣の子ども部屋で宿題をしていた」
と、話し始めた。



「パパは休日出勤のお仕事で、ママは村の集会に行くからって言って、家にはオレ達子どもしかいなかった」



そこで大人達が顔を見合わせた。

……集会にいたんだろうか?

浜谷さんの奥さんは、集会に来ていた?



(見慣れない顔なら、目立つはず)
と、私も記憶を辿るけれど、あの大広間にそんな目立つ人はいなかった。
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