あなたくれない

「つらいことを話してくれて、ありがとう」
と、おばあちゃんは月を見た。

赤い輪を持つ、真っ赤な月。



程なくして、救急車と一緒に警察もやって来て。

その場で光くんの死亡が確認された。

物々しい雰囲気の中。

帰宅した恵くん達きょうだいの母親である浜谷 菜々子(はまや ななこ)さんは、事態の深刻さをまだ知らない顔で立っていた。





現象が見えなくなったのは、日付が変わる頃だった。



私は眠れず。

部屋の中。

明かりをつけて、勉強をしていた。



コンコン。

部屋のドアをノックして入って来たのは、おばあちゃんだった。



「眠れないの?」
と、尋ねる。



「まぁ、お互い様だ」



おばあちゃんは私のベッドに腰掛け、
「今日は悪かったね」
と、頭を下げた。




「集会でのこと?」

「そうさ。ショックだったろう?」

「……ショックだけど、でも、なんか不思議だった」

「?」



私はおばあちゃんの隣に腰掛ける。



「私、死ぬんだなって思ったけど……。全然実感がわかないっていうか」

「うん」

「まだ生きられるような気がする」

「……」
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