どうせ、こうなる運命


「…あなたの、名前は?」

「俺はお嬢様に聞いてるんだけど」

「すみません、言います」



名前くらい、さっさと言え。

尚更、この男には絶対に逆らってはいけないのは重々わかっているだろう?

礼儀として、質問をされれば、正直に答えなくてはいけない。これは、世界のルールだ掟だ。


私が、破っていいはずがないだろう……?




「名前、言いたくないの?」




男は、優しい目を私に向ける。

私の心の内が、バレた?見抜いた?

顔は真顔だったはずなのに…、顔からわかったの?



「いえ、そんなことありません」



だが、私の答えに、男は無視をした。



「じゃあ、言わなくていいんだよ」



優しい目に吸い込まれたように、何も言えなくなる。どうしてそんなに優しい目を、私に向けられるのか、そう疑問に思う。


自分の弱さに失望する。

名前すら言えないなんて…、

なんて恥ずかしいんだろう…、


言いたくないからって、言えないなんて。本当に私は、出来損ない、弱虫、弱虫、。

これで、何度目の自分への失望?数えられないくらいで、ほんと、自分が嫌いになるばかり。


そんな私に、男はこう言った。



「名前は、その人にしか与えられない大切なものなんだから。無理矢理、口から出すもんじゃない」



なにカッコつけて、名言みたいなことを。

心内には全く響かない。

…でも、あなたには、言っていいと思えた。



「……わかりました」

「んん?」

「名前、聞いてみて下さい、私に」



男は私との間を詰めてきて、興味津々な様子であった。ほんと、嬉しそうな顔をする。


…なんだ、言わなくていいとは言いながらも、本当は、めちゃくちゃ聞きたかったのか。

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