どうせ、こうなる運命
頭に現れた記憶やらは、やがて崩れていく。
止めどないほどに、崩壊していく。
ボロボロと崩れていき次期に塵になって、風に吹かれてでもしてどこかに消えてしまった。
記憶も思い出も掛けてくれた言葉も、
もうこの世界には存在しない。
あの人のことは、もう……、
触れることも、出来ないから。
「……どうせ、こうなる運命だった」
ああ、ダメ、全然ダメだ。
もう、思い出さないって決めたのに。
消したくてどうしようもない記憶に限って、頭に過って来てしまうのは何故なんだろう。
…だって今、私がここにいるのは、その出来事があったからだ。忘れることはできない。
過去と今は、当然のように繋がっている。当然だが残酷なことに、私が死ぬまで、その記憶が消し去ることはない。
今までのように、消せ消せ、と自分に何度も言い聞かせ、無以外の感情を押し殺す。
それから、何ともないように顔を上げる。
「ん、なんか言った?」
「はい?何も言ってませんが」
それから、「それじゃあ、」と何ともないように平然とフリをして、私は続ける。
「あなたの名前を聞かせて下さい」
自分が言ったら相手に質問を返す、という暗黙の掟を、私は、今日もきちんと守った。
私は無だけを見つめることができる。
それ以外の感情や想いを廃除できる。
こんな技名もない得意技を持った私を、誇れる自分はどこにもいない。