どうせ、こうなる運命
「なに、零堂夏お嬢さま?」
スッと右手を差し出し、小指を縦に立てる。
「矢浪海さん、」
カイも突然の名前呼びに驚いたのか、私にはカイの肩がピクリと動いたように見えた。
…名前呼ばれるの、カイだって、慣れてないのかな。
「もう人を、傷つけないで下さいね」
カイは、驚いたように目を丸くする。
私の小指は、空間に留まっていた。
数秒じっと待っていたが、カイは、空中にいる私の小指に絡ませてはくれない。それでも、私は、小指を立てながら待っていた。
「………俺が殴ったから?」
「ああ、はい、そうですね」
「…なんで?俺は、ナツを守ったんだけど」
「はい、守ってくれたことは、十分にわかってます。殴りに行ったあの人が悪い」
でも、でも…、
「……あの人、ほんとに死んでたら、まじで、どうするんですか…?!」
まじで、なんて言葉使いたくなかったけど仕方がない。真剣だったから言っただけだ。
ポカンとしていたカイは、面白くもないのに、不思議と腹を抱えて笑い出した。
「い、いやだって、あんなに血流して黒目どっか行って倒れてたし、どんな力を秘めたらああなるんですか?人殺しになります、ほんと、…死んでたら、どうするんですか…?」
「へぇ?面白いこと言うじゃーん」
「…それが面白いなら人として終わってますね」
「でも、俺が殴らなかったら今ごろナツが死んでたかもしんないよね??」
確かに、カイが殴らなかったら…、
私の方が殴り殺されていたかもしれない。そんなことを想像するだけで怖い。