どうせ、こうなる運命

それでも傷つけないでって、本当に矛盾だらけの約束、ってことはわかってる。

…でも、でも、



「ショックだったんで。あの皮膚と皮膚が重なって殴る音とか、あの倒れた男の姿とかが。全部、全部。もう、…見たくないんです」



…もう、見たくない。

もう、が付いている理由を、

カイは、知っているんだろうか。


怖くなさそうにさらっと流しながら言うと、カイは、ふうん?と吹き出したように笑い出す。



「あんな無表情披露して、ほんとはビビってたわけ?ほんと、平和ボケのお嬢様、最高だわ」



私の生きる世界は平和?平和ボケ?

じゃあお前の世界はなんなの?は?

同じ世界生きてるだろ?ふざけんな…?


さすがに平和ボケなんて皮肉なことを言われたのは初めてで、しかもこんな身分底辺族の、刑務所入りの男に言われるなんて……


本当に本当に、舌打ちしたくてたまらなくなったが、我慢をして、ぐっと堪えた。



なんてこと言ってんだ、こいつは。

ほんと、人格終わってる……



すると、カイは私の小指に絡ませてきた。

突然すぎて、心臓が跳ねた感覚がする。



「っ…」

「わかった、もう人のこと殴んない」



ニヤッと笑うカイに、私は、「約束です」と少し口を緩ませてみせた。全然平気に人を殴りそうなカイだが、信じてみることにする。

こんな風に、人と話をしたのは久しぶりだ。ちゃんと、会話は成立していただろうか?



「ねぇ、お嬢様、」



カイは、少し上目遣いをする。まるで、私を守る、執事のような存在に見えた。


…お嬢様、なんて私のことを言っているけど、カイは、私を知ってるんだろうか?




「なんで、この刑務所にいんの?」




カイは、何も知らなかった。

過去のことも、テレビに映る私のことも。



…私が、何故、ここにいるのかも。










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