どうせ、こうなる運命
2.
「…はぁ………」
ダメだ、また吐息が漏れる。
夜だが、珍しく中々寝付けないでいる。
眠り方を忘れてしまったみたいで、不思議な感覚だった。
いつも、瞼を閉じればすぐに眠りに落ちるこの私が……
ガラスを境に、窓から月明かりが差している。
逃亡防止用に設置された金属棒と、窓自体が閉まっていて、光を放つ源である月は見えない。
こんなクソみたいな世界にある月なんか、どうだっていいと思っていた。当たり前に浮かぶ月なんか、全く、目移りしてなかった。
それが、今になって後悔している。もっともっと、目に焼き付けておけばよかったと。
……月が、恋しい。
いや、海も恋しいな……
その時の音も匂いも、見た目も、
もっと感じて、言えばよかったんだ。
―いびき、息の音が聞こえる。
同じ部屋の囚人らは、私と違って、すっかりと寝付いたようだ。
あんな大騒動があった後、私は顔を見られないように、コソコソと自分の部屋に戻った。
コソコソなんて好きではないし自分らしくはないが、仕方がなかった。
「うわ、来た来たあの大騒動女ぁ~」
「お嬢様のこと助けた人いたらしいよ??あ、その人との大恋愛発展したんじゃね?」
「待ってウケる~、…あたし見たんだけどさ、あの男の子、まじでイケメンだったの」
無の表情をして部屋に入った私だったが、部屋の同じ囚人からのコソコソ嵐が、私が彼女らの視界に入った途端にやって来た。
いつも私が何かする度に、その行動についてコソコソ言ってきたりする。耳の良い私には、全て聞こえていることなのだが。
だから今回の騒動は、少しばかり、私でも何と言われ続けるのか、怖かった。
だけど。
その波とやらは、自然と過ぎ去るもので。
すぐに嵐は過ぎ去っていて安心した。
またその騒動が思い出され、笑われる時が来るのだろうか、なんて妄想が絶えないが。