どうせ、こうなる運命

私のいる部屋の前だけは、妙に小さな声になっている刑務官の行動が、気掛かりだが。



目を覚ますと、視界には、割れ目の入った、今にも落ちてきそうな天井がある。



ゆっくりと体を起こして、辺りの状況を理解する。




「…朝、か」




そうポツリと呟いて、

窓の金属棒から僅かに漏れる光を見つめた。



いつも通り、この部屋でちゃんとした時間に起きているのは、私ひとりだけだった。

プライバシーも重視され、刑務官が直接ここに入ってくることはないらしい。別に寝ていても気付かれないため、他の囚人らは、平気で寝ている。



「…夢じゃない、か」



今を実感して、ひとりで心を痛める。

また、昨日と同じ今日を生きるのか。

いや、昨日はいつもとは少しばかり違っていた。


灰色の囚人服に付いていた毛玉を軽く取ってから、部屋を出る。



「あ、おはようございまーす!」



部屋の前に循環していた男の刑務官に私は、試しに、笑顔で言ってみる。


他の囚人にはこうだ。


「あぁ?」

「黙れ」

「容易に喋りかけるな」


そんな目を向けるが、私には、こう。


「あ……おは、おはようございませ、す」


急に焦り出すし?かみかみだし?

あー笑える、本当に、笑える。

バカみたい。


< 25 / 87 >

この作品をシェア

pagetop