どうせ、こうなる運命
食堂や図書室がある広い廊下へ出るが、流石に、まだ起床時刻早々すぎて人の姿はない。
この大通りを歩く姿が私しかいないからか、循環する刑務官の視線を感じる。
…ふと、ある場所に目をやる。
そこは、昨日の例の大騒動があった場所だった。大男が倒れていた場所には、まだ、血痕らしき赤いシミが真っ白な床に残っている。
横目で眺めて、ふっと鼻で笑う。
あの大男、結局、死んだのかな、。
そのまま、どこか寝ぼけたままの私は、長い廊下をゆっくりとした足取りで過ぎる。
―足を止める。
細く、強い光が差していた。
「…あたた、かい」
殺風景な刑務所の廊下に、一筋の光が差していた。私は、その光の中に入っていた。
「…庭?」
よく見ると、細い扉があった。
その細い扉から、光は差していたのだ。
温かい。
それは、朝の、昇りたての太陽光だった。
ガラスを通り抜けてまで私に差してくるその光は、本当に、眩しくてたまらなかった。
この角度でこの程度の光がなかったら、こんなに小さな扉は、絶対に、気付かなかった。
…行って、みようか。
導かれたように。自然と、足が動いたように。朝の太陽を求めるように。
周りに誰もいないことを確認して、付いていた銀色のドアノブを、ぎゅっと握って、ぐっと押してみる。