どうせ、こうなる運命
…なにしてんだ、私。
人に見られるリスクは全然あったのに、独り言呟いて、太陽掴もうとして、なんて、バカなことを。
ああ…、寝起きだがら髪も跳ねて爆発してるし…いや、今更、どうにもならないことか。
足汚いのに全然裸足でいるし…、靴下を履くことすら、寝ぼけていたからか忘れていた。
私のことをバカにしたように、男は、ニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべている。
すぐにわかる。
生意気なセンター分けと、憎いほどに、その綺麗な顔面。
カイ…矢浪海…
「なにしてるんですか?」
別に興味もないが、聞いてみることにした。
「そこに花壇あんだけど、それの手入れ」
そうですか、と何となく頷く。
「……趣味とかでですか?こんな暑い中、花荒らしでもしてるんですか?」
「だから手入れつってるだろ。なにそれ、俺へのイメージどうなってんだよ」
「なんで手入れを?」
「絶賛、俺は金稼ぎ中なんでね」
刑務所にある労働は、花壇の手入れやトイレ掃除、木工椅子を作るなど、色々な選択肢があったことを思い出す。
それでカイは、花壇の手入れを選んだのだ。
「でも流石に暑い、やばいわ、無理ぃ」
無理ぃ、なんて大袈裟にへたり込みながらも、花壇の手入れを終えたらしい。
…ちゃんと真面目な所はあるんだな。
いや、お金のためだから何でもやれるのか。
首もとをパタパタとするカイの頭からは、汗が滲み出て下へ落ちていっているのがわかる。
顔も、折り返した服も、泥だらけ。
…泥遊びで帰ってきた子供みたい。
朝から、この強い日差しは暑くてキツいだろう。帽子も日傘も、日焼け止めも塗らず、カイは、ただ、花を手入れしていたのだ。
一体、ひとりでいつからやってた?
お金のために、そこまでやって…