どうせ、こうなる運命
「…あげましょうか?お金」
私の発した言葉が意外だったのか、カイは、目を丸くする。
「あー私、別にもらえるんでいいですよ」
「いやいや、は?なに、もらえるって」
「…いいから、はいどうぞ」
ポケットからは、乱暴に入れ込んだ小銭や札束が出てくる。
溢れ落ちそうになりながらも、手一杯に持ったお金を、カイに差し出す。
私がお金を渡す日が来るなんてな、なんて失笑する自分がいると同時に、お金を触るのは、どこか慣れない感覚がある。
サーッと、涼しげな風が吹く。
カイの汗で濡れた髪を乾かすように、
風は、短髪の髪をなびかせていた。
私の長い黒髪も、風に逆らえずなびく。
カイは、そんな私をじっと見つめていた。
何を考えているのかわからない、無表情で。
「私にだって、利点はありまして」
いつまで経っても受け取ってくれないカイに、私は言った。
「いつも洗濯するとき、小銭とか札束とか入ったまま洗濯しそうになるんで。もういっそのこと、全部渡そうと思ったんですー、」
「おかしいこと言わなくていいよ、なつ?」
急に名前呼びで呼ばれて、心臓が跳ねる。
じゃあ…、と続けるカイの言葉を待つ。
「ありがたーく、受け取りまぁす!!!」
…え?
さっきの時間はなんだったのかと問いたくなるほど、パーっと顔を明るくしたカイは、どこか強引に私の手からお金を奪い取る。
キラキラした目で、手に溢れた小銭と札束を見つめ、器用な手付きでお札を数えていた。