どうせ、こうなる運命
私が何か口を開く前に、カイは、「飯でも行こ?」と私の手を引いて、歩き出してしまった。
とても大きくて、日焼けなんてしたことがないくらいに真っ白で、綺麗な骨の見える手が、私の手首を掴んで引いている。
…あなたは、どうして私の手を引いてくれるのだろうか。
「え、待って朝飯まだだよな?」
カイは、足を止めて確認するように振り返る。
「…はい、まだ、です」
曖昧な返事にカイは、よーかった、とまた嬉しそうに軽やかな足取りで歩き出す。
その足取りからか、ちょっとだけ、前を歩きづらくなるのだが。
ああ離してほしいな、なんて何となく思っていると、発されたカイの声が、妙に私の鼓膜に響いてきた。
「それでさ、なつ」
カイは、今度は、私に振り返らない。
私の手を引いて、ただ、前を歩み続ける。
風が吹いて、髪が靡き、青空を見上げるカイの髪と後ろ姿が、本当に、とても、綺麗で。
…きれい。
別に見惚れてなんかないけど、じっと、ただじっと、その背中を見つめてしまった。
何を、言うんだろうか。
妙な間の開け方に、違和感を覚える。
刑務所入りのクズ男の話なんかに、言葉を待つ緊張感なんか、味わいたくなかった。
それから、カイは、おかしなことを言った。
「いつか、俺を殺してね」
なに、言ってるの……?
喉に何かが詰まったように、え?も、は?も何も言葉が出せなかった。あまりにも、幸せそうな足取りだったから…、。
カイのことを、私が……?
…ねぇ、あなたは、何を、隠しているの?
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