どうせ、こうなる運命

飲もうか、それとも返すか…、

どうしようかと、内心パニックになる。

…見られてる。

すごく、見られてる視線を感じる。

絞り出てきた言葉が、これだった。



「…うぅ」

「うぅってなに、やばすぎ」



カイは腹を抱えて笑い出した。



「なに色々考えちゃって」

「…」

「嘘だって、ごめんごめんおじょーさま」



ほい返して、と、私の大事に持っていたメロンソーダを、今度はカイが奪い取る。



「メロンソーダ、飲んだことないだろ」

「…めろんそーだ、あります」

「うわ、まずメロンソーダ知らないじゃん」

「…知ってます、私のこと、なめすぎです」

「じゃあなんで緑の液体とか言ったの?」



何も言えなくなって、口を噤む。



「…知りません、飲んだこと、ないです」

「おー、正直」

「私のこと弄んでます?」

「別に??お嬢様って面白いなって?」



は?と圧倒的な真顔の私を前にカイは、おかしそうに笑う。



「…ソーダとか、炭酸とか、飲めないんです、。飲めるように、なりたいけど」

「へぇ?なんかかわい」



か、可愛い?

慣れない響きの3文字に、空耳かと疑った。

やっぱり、女性を騙した詐欺師と言うだけはある。またお金を引き出そうとか考えてそう。


するとカイは、あーあ、と悲しそうにため息をつく。



「飲んでたら、俺と間接キスになりそうだったのに。ナツ可哀想、惜しかったね」

「………は?」



どこか悔しそうに、カイはまたコップに口をつけて飲む。妙に唇に意識を向けていた自分が、心底、腹立たしくなった。


ニヤニヤ笑うカイの頭を殴り潰してやりたくなる。


き、キスとか、結構な声量で言える、カイの心構えが、全く理解できない。


他の囚人の目が嫌になる。

周りが見れず、すん、と下を向いた。

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