どうせ、こうなる運命


その時、頬に、冷たい感触が訪れる。


やっとのこと冷たさが脳に伝わり、冷たい、と言おうとした途端、それと共に、ベタベタとした気持ち悪い感触も、頬に残ってくる。



「ちょっ!!!……っ…」



はっと口を閉じて、自分がやったその光景に息を飲む。

反射的に、コップを手で、払ってしまったらしい。



「あっ……ご、ごめんなさい!!!!!」



バッとテーブルに手をついて、椅子から立ち上がる。

またその反動で、私の飲んでいた水のコップもコロンと倒れて、大災害となる。



「ひゃ……」



メロンソーダのガラス製コップは、不幸中の幸いに割れてはいないが、下へ落ちている。

テーブル全体は、緑色の液体と私の溢した水が混ざり合って、薄い緑色の液体が広がる。


タマゴ、サンド…


朝御飯を食べないつもりではあったのに、カイが食べろと私のために奢ってくれた、サンドイッチも、ソーダの海に沈んでいた。



「なつ?いいから落ち着いて、」



焦っていた私は、カイの顔も見なかった。


「雑巾をもらいに」とその場から離れて足を進めて、食堂を出てしまった。



…とりあえず、辺りを見渡しながら廊下を走る。



とりあえず、なんて嫌いな言葉。後回しにして、ただ何も考えてない象徴の言葉なのに。


…逃げて、しまった。


考えもせずに行動し、わからない行き先を無我夢中で走るなんて、本当に自分がバカみたいに思えてくる。

自分の恥じた行動から、雑巾をもらいに行くフリして、思い切り、逃げちゃったんだ。


ああ、なんて情けないの…?

ごめんなさい…ごめんなさい…

もう…最悪……

どうなるかはわかってたはずなのに、どうして手で払うなんかした?どんくさいし、まず、あれはカイがノリでやったことなのに…


―カイに呆れられるのが、嫌だった。

だから、逃げた。

そっか、私、もう、

見捨てられたくなかったんだね…、



―その、時だった。



昨日と、同じだった。

私の顔面に、誰かの生ぬるい大きな胸が当たって。

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