どうせ、こうなる運命
「なんだなんだ、その目?」
「…っ」
「血だらけのおじょーさま、超可愛いよぉ?」
男は、私の顎を掴んできて、ニマニマと気持ちの悪い笑みを浮かべる。
「震えてるなぁ?」
今度は、私の手首を掴む。
男の大きな手では、私の手首は容易に包み込まれてしまった。
「ああ、流石のお嬢様でも、怖いよなぁ?こっちこい、遊んでやるから、な??」
ちぎれるんじゃないかくらい、強い強い力で引っ張られ、体は、起き上がる羽目になる。
口元を手で拭うと、手の甲には、真っ赤な液体、が付いている。
…これ、私の血…?出血、してたの……?
本当に、運が悪い。
丁度、刑務官が会議中の時間帯だ。
少人数しか巡回していないためか、この状況を見られるのは、他人事で通り過ぎていく、他の囚人しかいなかった。
そのまま、どこかに、連れていかれる。
カイに掴まれた時よりも、この大男の握力は凄まじすぎた。いかに、カイが優しく引っ張ってくれていたかが、身に染みてわかる。
従うしかなかった。
足が、動きたくもないのに動いていく。
「っやめ……」
何?やめてくれるわけないだろう?
もう、いいや……
この際、どうにでもされたらいい…
―そして、急なことに大男の足が止まった。
そこは、廊下の行き止まりだった。
私は、ふらふらとした足取りになる。
すると、壁に体を追いやられ、喋れないようにか、口元を手で塞がれる。
生ぬるい手の温度、生ぬるく乱れた息、誰もいない廊下、垂れ落ちる汗、気持ち悪いほど、ニマニマ笑う男の表情。
気持ち悪い。
吐き気がする、なにこの人、気持ち悪い…
なに考えてるの…?
今から、私はどうされる…?
それから、スローモーションが始まる。
「つ……」
片手が、私の方に伸びてくる。
やっと理解する。
体を、触られる…