どうせ、こうなる運命


「…っ…!!!」



ああ、ほんとに、私って、何してるんだろう。こんなに分厚い手で、口元を塞がれてることだって、わかることなのに。

叫べない。

なのに、どうして叫ぶ?

どうして足掻こうとする?

ほんと、バカみたい、情けない、嫌になる。


無駄に足掻いてる自分が、この世界で一番、みっともない自信すらあるのに。


…助けなんか、誰にも、求めたくもない。


どうしたらいい?このまま、人形ようにじっとしてればいい?我慢してればいいの?この男の思うがままに、やられてたらいいの?


わかんない…頭が、回らないよ…

ごめんなさい…

私が、私じゃなかったらよかったね……



助けてください…誰か……




「なにしてんの?ナツ」




大嫌いなその名前を、誰かが呼ぶ。

そこに現れたのは、カイだった。

カイは、不思議そうに私を見つめている。


カイを見て安心したのか、立っていられなくなった私は、足が機能しなくなったように、ズルズルと地面に尻もちをついてしまう。




「ごめんな、さっきはちょっとやりすぎた」

「か、い……」

「あ、そうそう、雑巾は普通にもらえたよ?そんな俺から逃げるみたいに、走ってどっか行かなくてもいいのに」




カイは、私しか見えていなかった。前にいるこの男に、一度も目移りをしない。


今の状況、わかってる?

私、今、顔から、血出てて…、

体、触られそうになってて…、

壁に付き出されてて……、

逃げ場なくて苦しんでたのに……、


カイは、どうしてそんなに、笑っていられる?もしかしてカイは私を、安心させようとしてくれて…
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