どうせ、こうなる運命
「へぇ、カイねぇ?」
黙っていた大男は、生意気に、太い首を動かして縦に何度も振る。
「名前、カイって言うんすねぇ?」
「……ダルい。誰、お前」
カイは、前髪をかきあげて舌打ちをする。
カイの目付きが、まるで狼のようなギロッとしたものに変わる。その目に捉えられると、逃げられない、みたいだった。
大男は、そのまま私から離れて行って、カイの方に、一歩一歩と、歩み寄っていく。
足がすくんで、体が、動かない。
私の顔からポタポタと、液体が溢れ落ちる感覚だけがする。顔や体の痛み、胸の内の痛さが、今更じわじわとやってくる。
「お前なんだよなぁ?昨日、俺を気絶させた、小僧ってのはさぁ」
大男は、ポリポリと手の指を鳴らす。
「俺、もうちょっとで死ぬところだったんですよねぇ?どうしてくれるんですかぁ??」
「は?死なない程度に殴ってやった優しい俺に、何言ってんのかわかってんの?」
ダルい、と、またカイは言葉を吐き散らすようにして舌打ちをする。
ただ、単純に殴りに殴っただけだと思っていたカイの行動は、わざと、この男を死なせいように気を遣ってやっていたものらしい。
…知らなかった、そんなこと。