どうせ、こうなる運命

カイの挑発に、沸騰するやかんのように男の顔の色は赤くなっていく。

ニヤニヤした笑みを張り付ける男には、全く隙がないようだった。いつ、殴りにかかって来るかがわからない。



「あ、聞いた~?おじょーさま、俺達と違って、裏でお金もらってるらしいよぉ??」



男は、人差し指を立てる。



「労働もない、窮屈もなく??ナッシングパラダイスで、いいご身分だよなぁ??」



殴られたからか、鼻の奥がツンと痛む。私ですらわかる。これは、涙が出そうなんだと。

カイは、今、どんな表情をしている?想像すればするほど、鼻の奥の痛みが増していく。



「お金持ちでいいもん食べてさ?お前、なんでこの女を守る?俺は、このお嬢様を処罰してやってる、いいヤツなわけよ??」



そんなわけない、いいヤツなわけがない。

でも、何とも言えなかった。裏でお金をもらっているのも、お嬢様扱いされているのも、何だって、ここ男が言っていることは事実だから。


カイも、また、私を、捨てるだろうか。

はは。

まず、拾われてもないのに。



「だから、なに?」



血と涙が混じったようなものが、私の膝を濡らしていた。



「処罰?ただの変態のアホ殴りで説得力ゼロのお前が、そんなこと言って、俺がこのままナツのこと、見捨てるとでも???」




カイは、不思議なひと。

私のことなんか、見捨てればいいのに。

どうしてそこまで言ってくれるんだろう。

どうして、私のことを守ってくれるんだろう。私には、よく、わからなかった。
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