どうせ、こうなる運命
「助けるよ」
カイは、優しい目を私に向ける。
カイは、男の方へ、一歩踏み出す。
「…カイ、ダメ、殴らない、で……」
これから起こり得る騒動が目に映ってわかる。私は、頬を手で抑えたまま、自分の声を、なんとか絞り出してみる。
「もう、殴らないって、約束したでしょ…?ちゃんと、守って……」
「…っなに言ってんの?血出てるし。死にそうな顔してるのに…、一番わかってんのはナツだろ?なんでこの状況でそんなこと、」
「…カイには、人を、殴ってほしくないの」
カイは、驚いたように目を大きくする。
こんなこと言う私は、おかしなヤツだと思う。
カイが殴らないと、暴力を奮わないと、私のことは助けられないってこともわかってる。
ほんと、矛盾ばっかだ。
具体的な理由もなく言葉を放っている。
そんなこと、私が生きていた世界では、叱られまくっていたことだろうな。
でも、ここは、刑務所だ。
また、違う世界だから。
いい、好き勝手やる。
理由も、なくていい。