どうせ、こうなる運命
3.
私の頭の中には、1枚の記憶の欠片があった。
その欠片が、私の世界を変えたんだと。
「なんてことしたの!!!!!」
ヒステリックな声と共に、見慣れた顔の誰かは、私の頬を、思い切りビンタする。
大男が私の頬を殴ったとき、ヒステリックな声を聞いたとき、この時に感じた力加減と声が、何度もその記憶と重なっていた。
「いつかすると思ってたのよ…!!まさか、あの子を殺すなんてね!!!人殺し!!!」
土下座をして、床に頭を擦り付ける。
言葉を選んで、なんとか、平常を保って発する。
「私には、そういったことをやった、という記憶がございません、」
「はぁ?!あなたがその現場にいたんでしょう!?刃物だって持っていたのよ!?!?殺したに違いないわ!!!!!」
この10数年と一緒にいたのに、どうして、私のことを、そこまで疑うのか。考えたくもないほどだった。
私のお世話係の女性―
姫川さんは、厳しい人だった。
礼儀と言葉選びを大切にして、私にいつだって指導し、叱ってくれた。
これからの財閥を引っ張っていく私が、これからの社会で生き抜いていく道徳心、
そして食べ方のマナー、服装、礼儀など、小さな頃から教育してくれていた。
ヒステリックな声も頬を殴るビンタも、別に、初めてというわけじゃない。