どうせ、こうなる運命
「さっき、言ってたわよね?」
「…っ違う、さっきのは、」
「うるさいっ!!!!」
急いで口を噤む。
息が苦しい。ほんとに、息ができない。
過呼吸が止まらない私を知ってのことか、追い討ちをかけるように、姫川さんは言った。
「覚えてたのよね?フユくんが倒れてたの」
「…っ」
「血だらけで、何度も体に刺し傷があって、血の匂いがした。そう、覚えてるってさっき言ってたわよね??包丁が体に刺さってたっていう記憶が、あるのよね?」
「その記憶は…、あります……でも、…、」
「それ以外は、何も覚えてないのよね?」
「…覚えて、ません……っ」
声が自然と震える。
その時、もう1人の私が心の中で、呟いた。
覚えていない?
なら、私が、殺したんじゃないの?
あそこにいたのは、私しかいないのよ?
うつ伏せで倒れた背中には、ひとつの包丁が、容赦なく突き刺さっていて。そこから見える皮膚か何かと、流れ出す大量の血が見えて。
何度も何度も、体を刺されたようで。
頭も顔も胴体も腕も足も、血だらけで。
倒れた体のどこの箇所からも、大量の血が流れ出ていて。
赤い血が、床と壁にまでぶしゃっとあって。
妙な、鉄ような鼻に差す匂いがしていて。後から知った。それは、血の匂いだったこと。
体は、もう止まってしまって、微動だに動かない。息をしていないから。