どうせ、こうなる運命


―その1枚の情景の記憶だけが、私の脳裏にある。



「ぁはぁはああ…ぅぐぁはぁはぁ……」



肺が痛い、息が苦しい、。

思い、出してしまった。


血だらけの遺体。

吐き気を催すキツい、鉄のような血の匂い。



「自分が殺したのに、自覚もないのね。ああ、なんてみっともない。もう、壊滅的な、笑われながら生きる運命しかないわね?」



後から聞いた話、―

何者かに刺し殺されたフユと、同じ場で、私は、一緒に横になって倒れていたらしい。

目を開ければ、病院で保護されていて。


私が疑われているのは、あの場にいたからというだけの理由だけじゃない。


もっと、証拠がある。


その場所にあった刃物は、背中に突き刺さった包丁だけじゃなく、もうひとつあった。その包丁が、私の左手に、血だらけの状態で握られていたこと。


その時間帯、人通りを考えれば、私しかいないこと。


そして、何故私がフユに会いに行ったのか。

そんな理由の記憶も、私にはなかった。

殺したという記憶が、ない。


でも、遺体となったフユの姿が、

頭に、一枚の写真のように焼き付いている。




「もう決まりね」

「えっ……」

「きっとそうよ。殺してしまったというショックで、記憶を失ったの、あなたは」

「そんな……」

「医者も言ってたわ?脳の記憶部分が削られてたって。そりゃあ、幼馴染みのフユくんを殺したなんて、ショック、大きいわよね?」

「私が殺したの……?」

「こーんな、酷くて感情のない、人殺しを犯したあなたでも、ショックはあるもんねぇ?」




そっか……

私、人を…、殺したんだ……、

体も心も未来も、全部を、奪った。

記憶がないって、そういうことだ……

私が、私がやったことだった……


その時に、フユを殺したという私の意図は、勿論のこと、覚えていないけど…、きっと、何か、怒りや哀しみがあったんだよね。



でも、それで殺す手段に出るなんて…


私は、世界を恨んでいる目をしてると。

フユも、笑って言ってたよね。


知らぬまに私は、人を、殺した…


―その時の私は、フユが死んだというショックが大きくて、何も、考えられなくなってたんだと思う。



「はは」



何気なく、笑みが溢れた。

自分への失望か、それとも、フユが死んだショックか、重い重い罪に耐えられなかったか。




「ええ、私がやりました。私が、フユを、」








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