どうせ、こうなる運命
「殺した………」
視界が開けた途端、視界がぼやける。
瞬きをすれば、視界は鮮明になっていた。
仰向けになっていた私の涙は、目から耳の方へと流れていく。溢れる大粒の涙が、私の視界をもっともっと、ぼやけさせる。
ここは、どこなんだろう。
なんで、私まだ、生きてるんだろう。
「なつ」
「ふゆ…っ?」
ばっと起き上がって、その声がする方を見ると、私の願う姿はそこにはなかった。
代わりに、誰かが、ベッドサイドにあるパイプ椅子に座っている。
ベッドが何床も並べられている中の、私は、端っこの寝床にいた。広い部屋はボロボロで、今にも倒れそうな木製の壁に支えられ、割れそうな床に、覆われている。
窓からは、温かな光が差している。
光に、埃が舞っているのが見える。埃アレルギーを持った私は、その空間にいるだけで、鼻がムズムズして、気持ちが悪かった。
窓は開いているようで、ベージュ色のカーテンが、優しく風で揺れている。
見渡すと、ここは刑務所の医務室らしい。
部屋には、2人だけだった。
……いや、もうひとり、いる。
よく目を凝らすと、それは、私を襲った、あの男だった。また包帯の数や顔の痣が増え、私と同じようにベッドに倒れている。
ゆっくりと上下に体を動かし、息をしている。眠っているが、意識はありそうだ。
どうやら、私は、気絶していたらしい。
バチりと目が合った瞬間、誰かは、私に笑いかける。
「大丈夫、大丈夫」
そう言いながら、私の頭を優しく撫でる。
カイは、聞かなかった。
咄嗟に言ってしまった、フユの名前のことを。