どうせ、こうなる運命


「…私が、…ころ…した……?」



自分の両手を見つめる。その手は震える。


頭と体が切り離されたように、自分の体が、自分ではない別物のように感じて、

気持ちが悪かった。


この体が、あの人の笑った顔も全部奪った。

奪ったの…?私が…?刃物であんな風に…?


…そんなわけ、ない。


どんな理由があろうと、私は、フユをあんな風にはしない。違う、絶対、違うのに…


でも、そう思えば思うほど、心が締め付けられるように苦しくなる。私は、もう、罪の目として見られて、失望すら、されている。

今更、どう足掻いても、何も起きないから。ただ、黙って、刑務所で生きるしかない。


罪を犯した記憶がないから、自覚がないから、いつまで経っても、心が、ただ苦しい。



「もう、やだよ……」



ずっとずっと、保っていた表情が崩れていく。

本音が、嘘みたいに漏れていく。

目からは、溜まっていた涙も漏れていく。



「…ごめんなさい……こんな私で………ごめんなさい…自分は変えられなくて……不器用で…怖がりでちゃんとしてなくて………」



止めどない涙を、拭うこともしなかった。下を向いて、髪で顔を見られないようにした。



「私…無意識の内に人の命を奪うなんて………」



もう、最悪だ………

情けない、なんて見苦しい……



「今更どうやって生きたらいいの…?ひとり怖いよ……?なんでこんな刑務所にいなくちゃいけないの……?わかんない……皆…そんな目で見ないで……笑わないでよ……」



怖い、辛い、苦しい、。考えないようにしてきていても、頭にある、記憶は消えない。

だからもう、受け入れようって、忘れようって、ちゃんと、決めたことなのに……



「消えたいよ…ふゆ…………」



カイの前で、情けなく泣き崩れてしまう。

カイは、意味もわからないだろう。急に泣き出す私のことを、何も、知らないのだから。



…私は、ただ、あの人の鼻唄が…、好きだっただけなのに……



突然深海に落とされたような、

そんな、絶望的な不安感全てが私を襲った。


大嫌いな世界が、大嫌いな人間が、大嫌いな自分が、私のことを、いつまでも嘲笑う。

そんな目で見られて、平気なはずがなかった。なのに、それを隠して繕って、自分にまで繕って、繕って、繕って、繕って……


人殺しの目で見られ続ける私にはもう、これからの未来なんて、何もない。


最初からなかった愛は、更に失くなって、家族にも他人のように扱われて、笑われて、下を向いて歩いて、最期は、ひとりで死ぬ、。


今更、どうやって、生きたらいいのかな…

もういっそのこと……

死んだら……


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