どうせ、こうなる運命


は?やってみてよ?

ふざけんな。

動けないのわかってるなら早く助けろよ。



だけど、きっと、このままやらなかったら、カイは私を助けない。仕方がなく、恥ずかしながら、声を絞り出す。



「………た、……っ助けて」

「声ちっちゃ」



慣れない言葉を発すると、やっぱり、声が震えて小さくなる。恥ずかしくて、目を合わせられない私にカイは、面白そうに笑う。



「はい、ちょっと仰向けになってくれる?」

「…え?」

「大丈夫、変なことしないから、ね?」



カイが何をしようとしているのか全く読み取れず分からない。

だけど、信じてみる、ことにした。

なんとか回って、体を仰向けに倒す。



「目瞑って?」

「…はい、」



瞑った、その瞬間だった。

するとその時、足が、地面に着かなくなる。




「っひゃ……何して……」

「お姫様抱っこ」




あ、違うか、とカイは私に笑いかける。




「お嬢様抱っこ」




慣れた手付きだ。

これ、絶対常習犯。



「は!?ふ、ぶざけんな!!降ろせ!!!」

「うわ、お嬢だろ??なに言っちゃってんのぉ~??」

「っもう、いいの…!!いいんだよ!!私は、もうお嬢様じゃないんだから!!!」



鼻の奥がツンと痛む。

もう、また涙が出そうになる……



「目、うるうるしてる」

「っ…うるさい!!!早く降ろせって!!!」

「なつ、泣いていいよ」



急に来る優しい声が、止めきれないほど、涙を加速させていく。



「ほら、俺の胸に顔沈めて泣けば?」

「…は!?胸とかどうせ汗っ臭いくせに…」

「え?俺の胸、ラベンダーの匂いするよ?」

「…それは、きもちわるい」



笑うカイにつられて、私にも、笑いが溢れ出てきてしまった。
< 53 / 87 >

この作品をシェア

pagetop