どうせ、こうなる運命
医務室前は人の気がなく、静かだった。
心地よい、カイの鼓動が聞こえる。私の鼓動は、カイの耳に聞こえているだろうか。
「約束、破ってごめんな」
突然、カイが私に視線を落とさずに言った。
「…気にして、たの」
「いや?今思い出した」
なんだよ、というツッコミを抑えて、「別にいいです」と首を振る。
「俺だって守りたいものがあったから。その時は、約束なんて存在しなくなるもんなの」
守りたい、もの、。
その言葉には、私が、存在しているのかな。
「ナツが起きてくれてよーかった」
「えっ…?」
カイの言葉には、ただ純粋で、嘘が感じられないからだろうか。邪魔くさい考えも通らないで、ただ、私の心に届く。
なに驚いてんの、とカイは私に笑みを溢す。
「どんな時でも、絶対、俺が守るからね」
カッコつけないで。そう、口走って言おうとしたところで、私は口を噤んでしまう。
どうしてか、カイの表情は、
空で例えると、曇りに満ちていた。
どこか遠くを、見つめているようだった。