どうせ、こうなる運命
そういえば、と思い出す。
また、同じ部屋の囚人が話してた噂。
歩いてただけでも殴りにかかってくる感情制御不能機みたいな奴が暴走してるとか。
刑務官も、手一杯だとか言ってた。
私が入ってきてから、囚人たちとの面会する機会が増えてしまい、そういう暴走が増えてるから怖いなぁ……とか、言ってたっけ。
私に感謝してるか恨んでるのかよくわからない。…まあ、どうでもいいんだけど。
男は腕を上げ、脇に生える毛が私には見えた。骨も見えない、肉で固まったハンマーのような拳を、こちらに向けてくる。
…ああ、私この拳で殴られるんだな。
この数秒後で、血だらけになるんだろうか。
きっと意識を失うほどの重傷を負うだろう。
この一ヶ月間、平穏が続いていて完全に油断していた。私が悪い、私が謝らなかった。
でも99%、暴力に働くゴリラが悪い。
一応、真顔で謝ったものの、心なんてものは勿論のこと籠ってなかった。
どこか息を飲む周りの歓声が聞こえる。
そんなに、身分が上の令嬢の私が殴られるのを見て楽しい?嬉しい?気持ちいい?心地よい?
笑える。誰も何も言わない、助けてはくれない。別に、私もそれを望んでいない。
男も歓声も、自分の呼吸すらも、
全てが、スローモーションになる。
目に映る光景、全てだった。
…来る。