どうせ、こうなる運命
「―へぇ??だから笑顔を??練習ねぇ?」
私の今までの頑張りをぶち壊すように、カイは、ははっとおかしそうに笑う。
「ぶち壊してくれて嬉しいですー」
「ごめんなさい怒らないで下さい」
「ほんとに、嬉しいんですよ」
へ?とカイはポカンと口を開ける。
「昔の頑張ってた私に言ってくれたらよかった。…私の本当の笑顔が、好きだって」
意識してもないのに、変な笑いが漏れた。
「別に、今は作り笑いに関しては悩んでないです。周りに違和感なく褒められるほど、作り笑いは上手になったので」
「下手じゃん」
私は、再確認した。
カイよりかは、上の身分だってこと。
もう全部失ったけど、
地位もお金も身分も、全部、上だ。
カイはお嬢様と呼んでいるだけで、私の地位の高さを何も知らない。
だからそんなに、私をバカにして笑って笑って、言いたい放題好きなことを言える。
「…最初は、どうして作り笑いや愛想笑いとかするのか教えてもらってなくて、全然わからなかった。けど、必要不可欠なものって段々わかってくるものなんです、」
「ふうん?」
「……どうせ、カイにはわからないだろうけど」
ボソッと言った私の言葉に、私の想像とは全く予想もしない返答だった。
「わかるよ、俺も」
でも、カイは少しだけ寂しそうに笑う。
カイの目が、少し、水圧のように潤んでいるように見えた。でもその水はすぐに消える。
「ナツはそんなのしなくていいよ」
「…っだから、カイにはわからないって」
「その方が、ずっといい」
気付いたら、頭を撫でられている。
カイは、私を優しい目で見つめる。
私のこと、そんな目で見つめて……
すぐ隣にカイがいる。
そんな、安心感があった。
バカにしているのかしてないのかわからない。
けれど、ふふ、と優しく笑うカイに、どこかの胸の部分が、溶かされる気がした。
…いつから、笑顔が上手になったんだろう。