どうせ、こうなる運命



「ねぇ、なつ」




いつの間にか、もう夕方なようで。

この部屋では、正確な時間がわからない。3時間近く遅れた、壊れた時計があるだけだ。だから、ほぼ、何時なのかわからない。


時計を直してほしいと誰も思わない。

時間なんか、どうだっていいから。

空を見ていれば、大体わかるものだから。それでいいから。


ガラスを境に、窓からは、夕陽色に光が差している。そろそろ、部屋に、誰かが帰ってくるかもしれない。


カイも、そろそろ帰り時だろうな。


その時、私の背中に、何かの感覚がする。


え、





「動くな」





声も出さずただ驚く私に、カイの表情は、暗くて無表情だった。あの狼のような鋭い目つきで、私は、捉えられていた。







背中に何を当てられている…?手…?それとも…銃とか…?いや、そんなはずが…

わからない。見えない見たくない。動けない。動いたら殺される殺気さえ感じた。


私、今から、どうされるの…?


さっきまで普通に話して笑って、唯一、信頼を託そうとしたカイに、私は、この瞬間、怯えている。


…なんて、不思議なことなんだろう。


唐突なことに一変すれば、相手のイメージも、話した言葉も、顔も、笑みの浮かべ方も、全部が、嘘のようになる。




「なーんて、嘘なんだけど、」




カイの目は、いつもの丸っこい瞳に戻って、私を安心させるように笑みを作る。

カイは、私の背中に、触れたまま。

よくわからない冗談にポカンと口を開ける。

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