どうせ、こうなる運命


「もしこうやって、ナツの背中に、俺は刃物を突き刺していたとする」



何も知らないカイの発言に、フユのことが重なって、胸の痛む感覚がした。


フユは、こんな風に刺されたのかもしれない。痛くて痛くて、不安で、この状況が嘘みたいだったろう。


…それも、私が……


罪悪感でも後悔でもない感情が、私を過る。後悔できないのは、私の、記憶がないから。



力を込めたカイの手は、まるで、刃物で私を刺すかのように背中を押してくる。



「ナツは、痛くて苦しくてたまならないだろう。そんな俺は、偽物の笑みを貼り付けて、ずっと、楽しそうにナツと話をしている」

「なんで、そんな話……」

「互いに嘘つきだ。ナツは、平常を偽り話をしているが気付いている。…ナツのことを苦しめているのは、俺だってことに」



なんだか、カイの変な笑みの浮かべ方に違和感を覚える。笑みを顔に貼り付けて、心の内がバレないよう、何かを隠しているようだった。

隠すなんて、カイ、らしくない。

昨日に出会ったばかりで、「らしくない」なんて失礼なことではあるが、少なくともそう思えた。



カイは、どうして、

そんなに、寂しそうなんだろう。

触れれば消えてしまいそうな、

そんな気がする。



「その時、ナツはどうする?」

「…?」

「気付いた側から、ナツのことを苦しめてる俺から離れる?逃げる?それとも、なんか復讐でもして、次は俺を苦しめる?どうしたい??」



無意識なのか、カイが私の背中を手で押す力が強くなる。それでも負けん気で絶対に押されて体を倒されることはないように耐える。


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