どうせ、こうなる運命
「その時は、ずっと、気付かないフリをします」
耳に届くまで相当な時間がかかったのか、時間をおいてから、カイは、えっ?と、驚いたように目を大きくする。
「カイは、それを望んでる」
「…いや、…うん」
「だったらずっと、気付かないフリをする」
カイは、そっと私の背中から手を離す。
「カイは、私のボディーガードです」
「…あ、気付かない内にそうなの?」
「私って、嫌われてるんですよね。刑務所のの内からも、外からだって。だから、か弱いお嬢様の私を襲う人がいるかもしれない」
カイは、じっと、私の声を聞いているようだった。理解しているのか、よくわからない。
「だから、今は離れてほしくない」
「…そんな理由で」
「よくわからないですけど、私は苦しんでて、カイが私を苦しめている本人なんですね?で、それを私は、わかっていると」
「そう」
「なら、それでいいです、そうします」
「いいって……」
「私って今、人生最悪のドン底中の深海の中に彷徨ってるんです。…別に、カイが私のことを弄んで笑って、騙そうとしても、もういいんですよね。もうそれは、運命だから」
「…なにそれ、不幸のヒロイン気取り」
カイは、私のことを、何も知らない。
きっとこれからも、私が言わない限り、深くは知ろうとせず、何も聞かないだろう。
だからこそ、その境界線が心地よかった。
罪や過去は、人に話すのが、なんとなく難しいから。
…きっと、カイもそう思っている。