どうせ、こうなる運命
【said ??】
ひとつ深呼吸をする。
被っていた、仮面を取る。
扉を3回叩き、ドアノブを捻って開ける。
「失礼します、」
プログラムされたロボットのような、無感情な声が、静かな部屋に響き渡る。
「予定時刻より遅れてしまい、申し訳ありません」
深く頭を下げる。不便なことに、あの部屋には時計がなく、時刻がわからなかったのだ。だが、そんな言い訳は通用しない。
「いいのよ、顔を上げて?」
高く、華麗な女性の声がする。
言われた通りに、俺は顔を上げる。
「囚人服、よく似合ってるじゃない」
「…」
「これあなたに言うの、何回目だと思う?」
「…4回目ほど、でしょうか」
「正解、流石ね。あと5回は言うつもりよ」
ふふっと意味深な笑みを漏らす女性は、ゆっくりと俺に近づく。彼女は、囚人服の自分とは違い、長い髪でスーツに身を包んでいる。
彼女はそっと、俺の耳に囁いた。
「新たに指令が来たの、やなみくん?」
彼女は、俺の名前を口に出す。艶のある真っ赤な唇から、生温い息が耳に入ってくる。
これは彼女の香水のせいなのか、強く過激な匂いがして、喉から咳が出そうだった。
よく、この部屋に呼ばれることは多い。
今日もまた、新しい指令のためだった。
刑務所とはこれまた別世界のような部屋で、埃も舞っていないし、綺麗な壁や床がある。
小さな書斎のような部屋が広がり、整えられたデスクには、パソコンが置いてある。
この部屋は、刑務所とは別の舎にある。
人目に付かないような場所にあり、刑務官や国の警察ですら、ここは知らない者が多い。