どうせ、こうなる運命
突然、何者かに大切な人を殺され、
更に、自分にその罪が被せられる。
高貴で裕福な家庭で育ち、何不自由ない暮らしを送ってきた…そう、いわゆるお嬢様。
周りからの期待や全ての失望、突然、何も見えない奈落の底に落とされたような感覚が重ねに重なり重くのし掛かる。
俺のターゲットは、そんな、残酷的な傷を負ったお嬢様だった。
お嬢様は、見てしまった。
血だらけの死体になった、彼の姿を。
その姿はきっと、頭に焼き付いて離れない。
―そう。たとえ、記憶を消されたとしても。
彼女の記憶を消したのは、犯人だ。
消した理由。それは、殺した犯人の顔を、見てしまったからだ。
その犯人は、お嬢様の首に注射針を刺して、
記憶を消させ、眠らせた。
お嬢様の頭の記憶を、犯人は盗んで消した。
これが、紛れもない真実。
記憶を消されたお嬢様は、そのまま意味もわからず牢獄に入れられ、周りからの失望の言葉を受け、そして自分自身で殺したのか否かもわからないまま、自分を信じれなくなる。
口答えすることもできない、言い返すことができない、…足掻きもできない、苦しさ。
同時に、大切な人を失った、辛さ。
自分で自覚すらできないが、
零堂夏は、人殺しをしていない。
完全な、冤罪である。
全部、…犯人と、この裏組織のせい。
―ありがとう、かい
久しぶりに、誰かに名前を呼ばれた。
そりゃ、俺が本名を言ったからだけど。
―っま、た、…また、会おう
お嬢様は、恥ずかしそうに、でも頑張って、目を合わせようとする。それから、最後は負けたように、俺から目をそらすんだ。
お嬢様は、他よりも何倍も、見抜く洞察力がある。うまいんだ、人の顔を伺うのが。
元々、下調べする前から、テレビやスマホでスクリーンを境にお嬢様を見たことはある。
お嬢様は、何かとプロジェクトの会見を開いたり、もう19の財閥の娘だ。何かと、役割を果たしているようだった。