どうせ、こうなる運命
4.
暇だった私は、刑務所図書館で本を読んでいた。
涼しい、静か、人気なし。そんな3つが揃ったことで、この図書館にいることにした。
囚人達も労働へ行っている時間帯だからか、図書館に人はいない。
一応、まだ私を襲う奴らがいるかもしれないということで、警戒心は念に持っている。
静かな静寂は不気味で仕方がないのだが、人はいないとみて、心の緩まりを感じた。
ここの図書館にある本は、全て寄付されたものだからか、とても、汚い。ボロボロに破け、間、間でページのないものが多い。
読み終わった本、いや、ほぼ読める状態ではなかった本を、渋々、本棚に直しておく。
それから、本棚から新たな本を取ろうと、ターゲットとする本を睨み付けるように、ただじーっと、横に目移りして探していく。
そこで、新しそうな本が目に止まった。
年数も最近なようで、少し、胸が高まる。
「つ………」
本棚の高い位置にあり、手を伸ばしても思い切り背伸びをしても、全く届かない。
ああ、もっと身長が高ければよかった。
諦めようと思った、その時だった。
「取ってあげよっか?お嬢様」
ふと見ると、見慣れた顔があった。
…人気、なかったはずなんだけど……
「…お化け?幽霊?どっちですか?」
「え、ど、は??どゆこと?」
キョトンとするカイに、「いや、何でもないです」と真顔で首を振る。
「あれ、絆創膏とれてる?よかったよかった」
ふふ、と笑いながらカイは私の頬に触れる。
まだヒリヒリと痛むんだ、やめろ。
そう心の内でツッコミながら、その手をさっと払う。
「とれた、大丈夫、でもまだ痛い」
そう、片言だけど、答えた。
カイは、そこまで伸ばしもせず、ひょいと余裕な感じを出してその本を棚から取り出す。
そして、しばらく本を片手に持ったまま、じっと私を見下ろす。
「…身長、ちっちゃ」
ボソッと言ったカイの言葉が、私の頭に響き渡る。カチン、とガラスの割れる音がした。