どうせ、こうなる運命
「え、海って名前出てる」
カイは、開いた本の1ページ目に出てきた、海、という単語に指差して反応する。
「名前じゃない、うみとして出てる」
「はーいはい、ごめんなさあい」
カイは、丸テーブルにごろんと顔をうつ伏せる。
この時間帯なのに何故、図書館に?人気はいなかったはずだったが…?そう思って、本に目を落としたまま、何気なく聞いてみる。
「仕事は、労働は、しないの?時間帯でしょ」
「んー、いつもはしてたんだけど。俺はナツのボディーガードだから」
「…ボディガード?」
「いや、言ってたろ前に」
「…」
「あ、その顔忘れたな??」
「…」
「まあ、暇っていうのもある。だって、お金には、全然困ってないし?裏でお金もらってるナツさんに、ぜーんぶ、貢いでもらいましたんでね」
「ちょ、声、大きい…!!」
シーっと口の前に指を立てると、カイは面白そうに「裏でお金ー」「おかねぇー」「おっかねぇー」なんてわざとらしく叫ぶ。
「でも、」
机に肘をつくカイは、背筋を伸ばして、容易に私を見下す。やっぱり少しだけ、距離が近い。距離感が妙におかしいのだ。